その5
魔法使用の制限規定およびいわゆる「禁呪」について

 倫理上の理由、あるいは行政上の理由から、幾つかの魔法は使用を制限されたり、あるいは原則としてその使用を禁止されることがあります。
 また、魔法によってはいかなる理由があろうとも使用が禁じられているものもあり、それらは一般に「禁呪」とよばれております。

「蘇生」魔法についての禁止規定
 主に倫理上の理由から、「蘇生」魔法に関してはいくつかの禁止条項がある。

★ 死後、一定期間を過ぎてからの蘇生を行うこと。
★ 天寿を全うしたと思われる死者を蘇生させること。
★ 葬儀を終えた死者を蘇生させること。
★ 当局により死刑に処せられた者を蘇生させること。
★ 自殺者を蘇生させること。
★ 当人もしくは遺族の誰もが望まぬにもかかわらず、術者がみだりに蘇生を行うこと。

 以上の事項に違反せず、当局の許可を得た場合のみ、「蘇生」魔術の実行が認められる。
 その場合も、必ず複数(最低3人)の有資格魔道士による共同作業で行われる決まりになっている。
(施術の成功率を高くし、かつ責任を分担させるため)

 なお、より高度な「復活」魔法に関しては、施術可能なレベルの魔道士が存在しなくなったため、すべての規定が事実上死文化してしまっている。

「呪詛・呪殺」の禁止
 怪我を負わせたり、病気にさせたり、他人の健康を損なうことを目的として魔法を使用することは犯罪行為と見なされ、暴行罪や障害罪に問われる。
 その結果として、人を死に至らしめた場合には、傷害致死罪が適用される。

 人を殺害する目的で魔法を使用する者は、殺人罪(またはその未遂罪)に問われる。

 上記の目的で魔法を使用した者は、その程度に応じ、一定期間いっさいの魔法の使用を禁止される。
 これは、へたくそな魔法で誤って上記の結果を生ぜしめた場合にも適用されることがある。

魔法による破壊行為の禁止
 他人の財物を毀損する目的で魔法を使用し、実際にその財物を毀損した場合には器物損壊罪が適用される。(財物が損壊していなくても処罰されるが、刑は減免される)

魔法によるテロ、争乱の厳禁
 公共の安寧を攪乱する目的で魔法を使用した者は、魔道界を追放され、無期限の魔法使用禁止処分を受ける。

 同行為により器物破損、傷害、殺人等の罪を犯した者は、その程度に応じて処罰される。
 (通常の犯罪よりも罪刑が1〜2段階ほど重くなっている)

魔道士の戦闘参加制限
 軍当局により、正規の書面による依頼を受け、魔道界の許諾を得た場合を除いては、いかなる理由があろうともみだりに戦争行為に荷担してはならない、と定められている。

 違反者は魔道界を永久追放され、一生涯魔法が使えぬように「処置」される。

★ マウア暦538年の内戦勃発により、この規定は事実上反故となった。

天候を左右させる魔法の使用制限
 雨を降らせたり、天気にしたりといった、天候を変化させる魔法を行う際には、あらかじめ当局に届け出てその許諾を得なくてはならない。
「効かぬまじない、お構いなしでも、よく効くまじない、ちょっと待て」
 などと、ことわざにもなっている。

★ 高レベルで実行できる術者が数少なくなった現在では、あまり意味のない制限規定である。

地形を変化させる魔法の禁止
 一般人が勝手に土木工事を行ってはならないのと同じ理由で、地形を大きく変化させるような魔法は、その使用が原則として禁止されている。
 当局の依頼を受けた場合にのみ、実行が許されることになっている。

★ これも、それほどの術者がいなくなった現状では、ほとんど意味をなしていない。

暗黒魔法の使用厳禁
 マウア暦538年に暗黒魔道士たちとの和解が成立するまで、暗黒魔法に関してはそれを使用することも研究することも厳しく禁じられていた。

 違反者は魔道界を永久追放され、一生涯魔法が使えぬように「処置」された。
 それが不可能な場合、魔法牢獄に「封印」された。

★ 「魔法」の存在する世界の犯罪累計は、それが存在しない世界のものとはかなり異なってくると思われます。ここでは幾つかの例をシミュレートしてみましたが、熟考してみれば、まだまだいろいろと禁じられるべきものの例が出てくることと思われます。「架空世界の法律を徹底して構築してみる」というのも一興ではあるのですが……おそらくは膨大な量となる(六法全書を一人でまとめようとするようなもの)ことでありましょうし、ストーリーとも関係有りませんので、とりあえず(今のところは)止めにしておくことにいたしましょう。(^^)

  

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