その10
「魔石」の意思と相性について

★古代期から中世期にかけては、まったく論じられることもなかった命題ですが、近代になって「魔石」が一種の生命体であることが判明すると、それが単なる下等生物であるのか、それとも意思を持つ高等生命体あるのかについて、さまざまな議論がなされるようになりました。
★このルテラ世界の成り立ちとも大いに関係してくるこの問題について、少し紹介してみましょう。


「魔石」の意思
 「魔石」の働きは、ただ単にその珪素型生命体の物理的な生命反応が、結果としてそのように働くというだけのことであり、そこに何ら「意思」のようなものは見いだせない……とする説が、長年、ガルテカにおける通説であった。
 しかし、最近では異論も出されるようになってきている。
 「魔石」にも何らかの意思を持つ個体が存在すると考えた方が、すべての事象を説明しやすくなるというのである。
 これらの異論を提出した者たちが、皆かのデュルガーの研究者たちであったという事実は、なかなかに興味深い。軍事機密のベールのせいで詳細が語られることはないが、おそらく彼らは、デュルガーの作成に当たって「魔石」を用いる過程において、何らかの新発見をしたものと思われる。


「魔石」の相性
 「魔石」にはいわゆる相性のようなものがあり、互いに反発しあったり、逆にそれぞれの効果を相乗的に高めあったりと、その組合せによりさまざまな結果をもたらすことが、長年の研究により明らかとなっている。
 ただし、そのような現象の存在については確認されているものの、そこには必ずしも一定の法則が存在するとも言い切れない結果が出ているため、研究者たちを大いに悩ませている。「赤と青を足せば紫になる」とか、「熱石と冷石を合わせると効果が打ち消し合う」というような、きちんとした法則が必ずしも成り立たず、一件非常に不合理な相性が存在することが判明しているからだ。

「どうも、まるで人間同士でいう『うまが合う』とか『合わない』とかいった類の関係が、これらの『魔石』たちの間にも存在しているとしか考えられない」
「当初は悪い間柄だった『相性』が、『説得』によって多少ましになった例も確認できた」


 などなど、この現象の解明にはまだまだ長い時を要しそうな雰囲気である。
 一説によると、「魔石」のなかには「石人類」とでも言える者たちも混じっており、そのような「石人間」どうしの場合、まさに「人間関係のごたごた」も発生することがあるのだということであるが……。


  

★当サイトに掲載されている小説、詩、その他の作品の著作権は三角隼人に帰属します。無断での引用、転載等はご遠慮下さい。★